学ぶことは、登山に少し似ている。
大切なのはどれだけ高く登れたかではなく、自分でどのような道を選び、進んだか。迷ったり、遠回りをしながら、それでも一歩ずつ前に進み続けられるか。
きっと、すべてが大切なプロセス。
ここは、自然豊かな森の中にある学校。
壮大な学びの森を自由に駆け巡りながら、手にするのは、自ら学ぶ姿勢や前向きに生きるカ。
「自分の好きなことって何なのかな」
「将来やりたいことってどんなことだろう」
新しい自分。まだ気づいていない自分。森の中で、あなた自身で、見つけてください。
今日の学校教育の中で、心ならずも中途で挫折してしまった人や、その場にいても積極的に学びに参加できずにいる人たちに必要な学びはなんでしょうか? 私たちは、3つの観点からその内容を考えました。これらの学びは、エンカレッジコースで行われるすべての学習活動の根底に流れているものであり、1つの活動の中に常に3つの学びが息づいています。
エンカレッジコースは、自ら学び、考え、想いをカタチにしていく力を育みながら、「学びの知恵」と「つながり」を育む学校です。
様々な経験を積み重ねることで、自信をつけ、自分らしい人生を歩み出します。
エンカレッジに入学する以前の私は、心身共に身体のバランスを崩し、教室に入ることができなくなり、言わば暗いトンネルの中を1人で歩いているような、そんな感覚でいました。そんな私にとってエンカレッジは暗闇に差し込んだ一筋の光のようで「ここでなら自分らしく頑張れる」そう感じさせてくれる場所でした。
とはいえ、入学後は苦労することも多くありました。自由度が高い校風が故に、一人悩み込んでしまったり、周りに合わせようとするあまり自分の気持ちや意思を軽んじてしまうことも多々ありました。ただ、どんな時も親身になってくださった先生方やお互いを理解し合える友人と出会えたことで、少しずつ自分のペースで歩いて行けるようになりました。
そんな私はエンカレッジの総合的な学習科目であるキャリアデザインⅢで、自己肯定感についての探究を行いました。自己肯定感の本来の意味である「ありのままの自分を受け入れる感覚」を持つことは、自分にとってはとても難しいことでした。周りと見比べると常に劣等感、不安感に苛まれ、自信を失い、自分という存在をうまく理解できない状態でした。もちろんこの探究を経ただけで、自分自身を完全に理解できたわけではありません。ただ自分にとっては大きな気づきを得ることができた探究でした。
エンカレッジにはコミュニケーションを苦手とする生徒や、私と同じように過去に傷を抱えている生徒、登校することすら難しく、孤独を感じている生徒など、本当にさまざまな生徒が在籍しています。他校と比べると、違うことだらけで、まるで理解されない独特な部分もあるのかもしれません。ですがエンカレの生徒一人一人にはそれぞれ違った素晴らしい個性があり、お互いを受け入れ合う穏やかな雰囲気があります。
多様性が叫ばれる現代において、エンカレは重要な役割を担っているのではないかと私は感じます。一人一人が「自分」という存在を尊重し、「仲間」を尊重できる、そんな学校であり続けてほしいと思います。
(令和3年度卒業生代表 答辞より抜粋)
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